ゲームな世界 No.2

                           小松郁

第2章

ふと私の様子におかしさを感じたのか女子生徒が声をかけてきた。

 沙紀ーどうしたの?お腹でもいたいのお?

ん、やばい何か話さなければ。
制服の肌に擦れる感覚、下着の締め付け、スカートの下の儚い気分。

 あ、あのこれって何ですか?

私は思わずその女子生徒に向けて話しかけているのだった。このラインより上のエリアが無料で表示されます。

 何言ってるの、バカになった?それとも記憶喪失?

やばい、やばすぎる。

 ちょっと具合が悪いんです。

私は必死で絞り出した。

 あーそっかじゃあ取り敢えず学校行ったら保健室で寝てなよ。
 私良いように言っといてあげるよ。

 あの貴方の名前って。
 紀子じゃない。何言ってるの。ホントおかしいね。記憶喪失マジ。

ええっ全く理解不明なんです。

 そうかもしれないです。何か学校って通ってるんですよね?

ここは時間稼ぎだ。

 そりゃそうだよー、行きたくないの。

 いえ道もわかんなくて。一緒に行っていいですか?

 もちろんだよー。道みんな一緒じゃん。

良かった。学校に行けば取り敢えずこの状況から脱出できるかもしれない。

胸は早鐘のように鳴っていたがこの状況にほっとして私は言った。

 ありがとうございます。
 私と紀子さんって友達ですか?

 何言ってるの。
 まあここみんな腐れ縁みたいなもんじゃん。

そうか腐れ縁なのか?
それは私の会社も同じだな。
何かこの状況がおかしくなってきた。

 ありがとうございます。少し元気が出たみたいです。

学校へは5分もかからなかった。

紀子さんは今日も授業大変よねえ。お腹もすいたねえなどと話しかけてきているので私はそれに
そうですね。ばかり答えていた。

うーん時間の流れまでリアルだ。

 校門にはCエリア第一女子高等学校という記載がある。
良かった。住所も重要だ。
Cエリアというところにいるらしい。
それに女子高校というのは取り敢えず男にはほぼ会わなくてすむということだ。
これは本能的に非常に安心する。

 校門は一応遮蔽扉らしき物は付いているが今は開いている。
しかし変な校舎だ。
モノコック構造と言うが四角形を繋げたような形の白い建物だが窓は普通通り並んでいるのだが柱や壁らしい凹凸は無く変な質感を放っていた。

 玄関らしきところでは扉に手をかざし門が開いたり閉じたりするので私も真似て扉に手をかざすと扉は開いて入ることが出来た。

 えっと今日は朝から保健室で寝てますね。

 そうだねえ、うんまあそうしたいならそうしなよ。

良かった。

 じゃあトイレ行って保健室行ってきます。
 トイレと保健室はどっちでしたっけ?

 もう本当にそこまで分からないのね。
 トイレはあそこで保健室は右の通路の一番奥にあるわよ。

 あ、ありがとうございます。

私はそこで紀子さんにお辞儀をして別れようとするが彼女は私の会社での30度上半身を傾けるお辞儀がおかしかったらしい。

 なんか変なの。
 そんなお辞儀してないでバイバイでしょ。

と、彼女は手を振るのではあーと思いながら私は手を振ってわかれた。

 さてトイレだ。
まず自分の顔とか色々確認しなきゃ行けない。

トイレとおぼしきところには男性用と女性用のマークがかかっていたが男性用に入る生徒は誰もいない。
 他の女性と同じように私は覚悟を決めて女性用に入った。

洗面台には他の女生徒達がいてドキリとしたが特に騒ぐこともないのでまあ大丈夫だったようだ。
何となく横目で鏡らしき物を見るがやはり私の動きにつられて私の上半身の横から見た姿が連動してるように思える。

 個室トイレしかないのは助かるが個室トイレにも取っ手も何もない。
それに赤丸と青丸が浮かび上がっているので私は取り敢えず青丸の方に手をかざした。
シャッとトイレの扉は開き便座らしき物もある。
私はそこに腰掛けた。

 ふう、何とか1ミッション完了だ。
疲れがどっと来る。
しばらく私はうなだれていると少し楽になってきたので取り敢えず用は足しとこうと思い下着らしき物に手をかける。
何かリボンやレースの白い可愛い下着だ。
恥ずっ!
おもむろに股間の辺りにそっと手をやる。

 うっ女のだ。
手からもだがそこからも刺激が来るので手に負えない。
うーん出るかな?
何となく下腹部を緩めた。
 ちょこっとだけ出たようだ。
ふう、胸も一応確認しとくか。
制服の構造はよくわからないがシャツのボタンを少し緩めて下着の上から胸を触ってみる。
うん絶望的に柔らかい膨らみがある。
胸の方も手だけじゃなく身体からも感覚がある。

 ふうまた呆然としてしまったがこんな姿を見られては一大事だ。
取り敢えず少し開けたシャツを素早く閉めパンツをずり上げる前に女というものは股間を拭いてからパンツを上げるなと思い直しトイレットペーパーらしきもので股間を拭いてパンツをずり上げた。

流すのもなんか流すコックなどは何もないので左右を見渡し色々なマークが浮かび上がってる中から水が流れてるようなマークに手をかざしてみた。
ジャーと流れたようだ。

 トイレの扉の上には中からも青丸と赤丸が浮かび上がってる。
今は赤丸だ。
またトイレの扉に手をやるとシャッと開いたので洗面台に向かった。
後ろではシャッと扉が閉まる音がして振り返ると全個室が青丸になってるようだ。

 女生徒達はもういない。
鏡をじっくり観察して確かにあのキャラクターの写真の通りだと思いながら色んな変な顔をしてみる。
確かに鏡の顔も連動している。
ただ余り人前で変な顔はしない方が良いことはもちろんだ。

 水のコックのサイドに浮かび上がってる青丸に手をかざすと水が流れるようだ。
さてハンカチ類は持ってるかな?
と制服のポケットを探ると布きれが入っているようだ。

それで水で手を洗いハンカチで手を拭くと、さて次は保健室かと思うのだった。
ちょっと探索しようか?
いや人がいっぱいいる部屋に入ってしまったらまずい。

もしかしたら職員室や教室などに突入してしまうかもしれない。

 ここは素直に保健室に行くべきだろう。
さっき紀子さんと別れた場所に戻ってきて指定された右の通路を奥まで進んでいった。
部屋の用途は大抵マークで記載されているみたいだが何のマークか分からないのもある。

遠くまで進むと十時のマークが目に入ったのでそこかなと思い扉に手をかざした。

 扉の中には誰もいないようだ。
ベットとおぼしきものが3セットあるようだ。
カーテンに隠れてよくはわからない。

 一番手前のカーテンをおそるおそる引くとそこは空ベットのようだ。
ようやく寝られるかあ。
昨日から寝てないのと訳の分からない状況で疲労感はマックスだ。

 私はリュックを横に下ろし、寝て起きればまあもしかしたら自分の部屋で目覚めるかもしれないと期待して徐々に目を閉じてじっとしていた。

 いつの間にか寝ていたようだ。
ふうなんか変な夢を見た。
眠り自体はよく寝れて疲労感も取れている。

と、目を開けると見慣れた光景なのかは知らないが夢だと思ってた白く光る天井の光景が広がっていた。
いやもしかしたら病院かもしれないと思ったが・・・。

 目、覚めた?

突然声がした方向を振り向くと白衣を着た物憂げな女性が片隅の机に座っている。
やけに色気があるな。
でも明らかに私にはぶっきらぼうだ。
私はおそるおそる聞く。

 あのー先生ですよね。

 何、何か体調悪いって記録があったけど記憶の方が混乱してるの?

 あ、それもあるみたいです。

 うーんここは遮断されているはずだけど・・・。

 えっと。

 まあ良いわ、貴方お腹すいてるんじゃない?
 もう下校時間が近いわよ。
 体調モニターでは別に異変はないわよ。

 はい

お腹も鳴りそうだ。

 えっとお弁当でしたっけ?

 そうよ寮で貰ってるでしょ。

寮!なんと有り難い響きか。

 その前に私の手持ちはリュックしかなかったはずだ。
寝る前にベッドサイドに置いておいたそのリュックを開けてみる。

 中には筆箱らしき布製の丸いケース、財布らしきものとメモ帳の類、あとはポーチみたいなものとラップにくるまった白い弁当箱らしきものなど色々入っていた。
 ふう、飯はただ飯か?有り難い。

 私は夢中になって弁当のラップを外しその白い箱を開けるのだった。
中にはコロッケの半切れのようなもの、ご飯、サラダの様なもの、何か分からない丸い小さな固形の物が入っていた。
まあいい。私は伊達に50年近く生きてない。
食えそうな物は何でも口に入れれば良い。これはどうみても弁当だ。
まあ味は普通の日本食だ。固形のはよくわからないが何かラムネみたいな味がする。

 貴方、女の子なんだから行儀よく食べなさい。

突然保健の先生が行った。

 はいぃ~。

私は脇を締めおそるおそるちょこちょことご飯を口に運ぶのだった。

食べ終わると私は疑問に思ってたことを口にした。

 あのスマホとかって使用禁止ですか?

 ん、スマホって何なの?

やばいっ通じないっ。

 あのー電話・と・・か・・

 あー電話するの学校では禁止だけど解除してあげようか?

 いやどうすれば?

 手のひら指でこするんでしょ。
 ちょっとまっててね。

 彼女はデスクに向き直り何かの操作をしたようだ。

 はい、やってみて。

 私はてのひらを指でこすってみた。
ブワンとプロジェクションが浮かび上がる。
そこには色々なアイコンの項目が浮かび上がっている。
良かった。サバイバルツールにこれは必須だろう。
もしかしたら抜けられるヒントがあるかもしれない。

 でも確か貴方ってお父様もお母様もいらっしゃらないわよね?

 えっ

 そういうものなのか?
はっ1人で仲間集め?何も知らなさそうなキャラクターの中で?
でもお父さんやお母さんとか知人類はキーパーソンになりそうだ。

 あのー私って天涯孤独なんですか?

 知らないわよ。どっか知り合いに電話するんじゃなかったの?

 こっちが知りたいが焦らずか。

 すみませんでした。特にかける相手いないです。
 これってどうやって消せば良いですか?

 もう一度手のひら指でこする。まったくもう。

私が手のひらをこするとプロジェクションは消えた。
それを見て保健の先生はまたデスクに向き直り何か作業する。
どうやら学校ではこれは禁止らしい。

 あのこれ寮とかでは使えるんですか?

 そうね使えるわよ。
 でもあんまり熱中しすぎないようにね。

ふうなんとかなるかもしれない。
早く寮に帰りたい。

と、そこにさっきの紀子さんが保健室に入ってきた。

 授業サボるなんて度胸あるねー。
 あっ五月先生っ。

 貴方たちね。
 まあ良いわ。もう下校時刻なのね。早く帰りなさい。

 はーい。

 私は弁当の抜け殻やらをバックにしまいながらベッドから起き上がった。
 
 すみません、お待たせしました。
 あの紀子さん寮ですか?

 そうじゃない。
 一緒に帰ろうよ。

ふう助かった。眠ったから大分落ち着いている。

 帰り道も今日は授業大変だったよー。あの先生厳しいよねーとか紀子さんは言っている。

 私も適当に相づちを打ちながらそうだったんですね。などと言っていた。
で気になることを聞いてみた。

 あの寮って食事3食出るんですよね?

 そうよー。毎日似たようなものばっかりで飽きるよねー。
 
 そ、そうですね。
 
 良かった。取り敢えずねぐらと食事は付いてる。
ゆっくり寮に戻って考えれば良いかと私は思うのだった。

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