量子コンピューターとはどういう仕組みで動いているのか?
今回は皆さんも関心が高いであろう量子超越性という概念をもつ量子コンピューターを筆者なりに解説してみたいと思います。
■量子コンピューターの計算原理
量子コンピューターでの計算原理を解説する前に今のシリコンコンピューターの仕組みを解説したいと思います。
主にシリコンコンピューターではシリコンの荷電状態による電気の絶縁体状態と電導体状態という半絶縁体状態を主に特性を持つという元素の特異性を利用して計算を行います。
これはシリコンの各素子が絶縁体状態と電導体状態でそれぞれを0と1に置き換えて計算を行います。
これが今のコンピューターチップが半導体と呼ばれる所以で導体の状態と絶縁体状態を持っているということです。
これが今稼働しているコンピューターが全て2進数で動いている理由ですが、基本的には量子コンピューターではこのベースが2進数ではなく量子揺らぎの重ね合わせ状態で何進数状態でも稼働できるというようなことを目指しています。
今のシリコンコンピューターの素子数は主に計算を行うCPUなどで10億個程度が組み込まれており、これから100憶個、1000憶個、1兆個などを目指していくところです。
これに対し量子コンピューターは、アインシュタインが不気味な遠隔作用と呼んだ量子揺らぎの状態で各素子が構成されるもので、各素子は全て2進数などで計算を行うのではなく、一気に何千億進数などといったことを実現するというようなことでこれが主に量子超越性と呼ばれる概念です。
この量子超越性により2進数で解くのに数億回というような計算プロセスがかかるものを一気に1プロセスで済ませてしまうといったようなものが主に量子コンピューターでこれが量子超越性と呼ばれて量子コンピューターは優れているといった発想の元になるものです。
こちらは従来のビットと量子ビットで厳密に区別されるところで量子ビットは量子の重ね合わせの一つの単位ですので従来のアルゴリズム等は量子コンピュータでは全然別の視点で見る必要があるなどの問題が出てきます。
この量子の重ね合わせ状態や量子揺らぎと呼ばれる理論の根底にある原理として、量子力学で馴染みやすいのが不確定性原理などで、有名なシュレーディンガーの猫で生きているか死んでいるかわからない猫が箱を開けた瞬間にその状態が確定するといった理論がわかりやすいのではないかと思います。
■量子コンピューターの種類
量子コンピューターは主に元素を量子揺らぎの不安定な状態にする事でその状態を観測しその結果として確定した結果を出力するようなプロセスでGoogleの超伝導体方式から中国の光素子などが今投入されています。
こちらには他にイオントラップ方式などありまして手が全くつけられていない方式から稼働成功と言われているものまであります。
主に物質の不安定な量子もつれが発生する状態を意図的に作り出せればどれでも良いのですが、実用化プロセスには超伝導方式などの冷却面での問題や光素子を観測する方式ではまず環境を作り出すのに大変な苦労がいるのでまだまだ実用化には程遠そうですが、軍事・政治面では比較的資金の投入が安易なことから現状でも量子通信などが国家元首クラスの会談には実用化されようとしているようですし国家機密レベルの暗号解読や暗号化プロセスで量子コンピューターが投入されるケースはあるようですがこちらはそれぞれの国家の機密情報になります。
実用化のステップにはシリコンコンピューターの半導体のように低電力で安定して情報処理できる事が重要かとは思いますので量子コンピューターが家庭内に入ってくるのはまだまだ先のことと言えます。
これは量子コンピューターの各素子が現状十数個程度でしか構成されていないなど真空管コンピューターやシリコンコンピューターの黎明期によく似ています。
また量子コンピューターは大規模集合や素因数分解などを解くには最適なコンピューターの様ですが、日常のタスク処理型のコンピューターなどに向いているかと言えばこちらはシリコンコンピューターの方が安易で、すでに築いた膨大な地盤がありますので早々には量子コンピューターには置き換えられなさそうです。
話を元に戻しまして量子素子は量子揺らぎの不安定な状態に元素を持ち込めればある程度自由で良いのでその手法は様々な視点から研究されており安価な量子チップの開発はノーベル賞レベルの研究になりますので皆さんも興味ある方は是非こういう研究をされてみて下さい。
一応こちら日本では中心になって研究を進めている東大の各研究室へのリンクを貼っておきます。
東京大学 平川研究室
https://thz.iis.u-tokyo.ac.jp/subject
東京大学 高木・竹中研究室
http://www.mosfet.k.u-tokyo.ac.jp/
■最後に
量子コンピューターはその量子超越性などが話題に上がり宇宙の不確定状態での計算処理をそのまま再現しようとするものですが、確定のプロセスで膨大なエラーが発生したまま一旦全てを確定させて次の処理を続行させなければいけないなどまだまだ実用化には大きな壁が立ちはだかります。
ここら辺のエラー処理技術も大きな研究課題となります。
そして今IBMが誰でも使える量子コンピューターとして一般にその環境を提供して自分なりのプログラミングを走らせる事ができますので興味ある方は以下のリンクより試されてみて下さい。
IBM量子コンピューター
https://developer.ibm.com/jp/depmodels/quantum-computing/tutorials/cl-quantum-computing/
まだまだ数素子で走らせている量子コンピューターが今の10億個の素子で稼働しているシリコンコンピューターやまたその素子の並列処理が安易な今のコンピューターに対してどこまで優れているかはまだまだ未知数ですが真空管コンピューターが軍事面で用いられたまま、一般向けには様々な課題があった頃からシリコンコンピューターが瞬く間に世間を全て変えてしまった様な20世期の経緯がありますのでこれがどうなっていくかは21世期の変動として注目すべきところではあります。
皆さんも今も歴史を作っていっていることに変わりはなく21世期は量子コンピューターの世紀になるかもしれないということで是非ご興味持たれた方はその量子素子の研究や量子コンピューターでのプログラミングアルゴリズムの研究など様々な分野からチャレンジされてみて下さい。
今回はここまでにしておきますがまた新しい発見などありましたら随時記載して行きますのでよろしくお願いします。